タイトルからして面白そうと気になっていた作品です。
本当は『11枚のトランプ』から読もうと思っていたんですが、行きつけの書店に置いておらず、こちらから手を出してみました。
これは単なる推理小説というよりも、からくり好きな作者の趣味が至る所で発揮されているような、「からくりマニア」としての小説のような気がします。
本筋と関係ない「からくり」の歴史や薀蓄が至る所で語られますが、それはそれで興味深く読めました。
江戸時代のからくり人形やからくり仕掛けは本当によく出来ていて、「先人たちの発想とそれを作り出せる力は凄まじいな」と思ったことがあったので、からくりの蘊蓄自体が楽しめた作品でした。
さて、肝心の本筋です。
物語の始まりは唐突ですが、事件はいきなり衝撃的です。
依頼を受けて追っていた人物が何と隕石の落下により死亡してしまいます。
まさかの「隕石の落下による死亡」という衝撃的な幕開けで、「もしかしてこれ自体がトリックなのでは!?」と疑いましたが、これについては正真正銘の不運過ぎる事故でした。
単なる不運な事故や計画的な殺人などではなく、いきなりの隕石の落下という展開は衝撃的でした。
まだ火山の噴火による死など、これに比べたら大したことないように思えてしまいます。
幕開けは衝撃的でしたが、次々に起こる事件は推理小説らしい展開で起こっていきます。
この事件にもっと大がかりなからくりが仕掛けてあると信じていたのですが、残念ながら本筋の方のからくりは個人的にはガッカリでした。
というのも隕石の落下の次に起こる事件のある描写で、何となく仕掛けに気づいてしまったからです。
第3の事件についても被害者が残した言葉の意味にすぐにピンと来てしまいました。
これで犯人が確信出来ました。
ただ、第4の事件については仕掛けが全く分かりませんでした。
種明かしされてみて「なるほど!」と納得しました。
ここは作者のマジック好きな性格が反映された、よく出来たトリックだったと思います。
全体的には「からくり」めいたトリックに期待していた分、ガッカリが勝ってしまいました。
また主人公がどうも好きになれませんでした。
ボスである舞子の方はなかなか良いキャラだと思ったんですが、敏夫の方はあまり・・・。
特に最後の方の急な突っ走りには付いていけませんでした。
(女性の方も女性の方で行動がイマイチ理解に苦しみましたが・・・)
元ボクサーという設定がどこかで活きるのかと楽しみにしていましたが、最後まで活きることはありませんでした。
そうなるとこの敏夫の方の魅力は半減以下になってしまい、敏夫の目線で物語が進むために、読み進めれば読み進めるほど苦しくなる感覚でした。
からくりの歴史や蘊蓄などは面白かったんですが、肝心の謎解きに関するからくりが個人的には不発で残念でした。
確かにからくり仕掛けのトリックになってはいると思いますが、期待していた程ではありませんでした。
前述の通り、主人公も好きになれず、必然的に物語にものめり込めずに終わってしまいました。
最後のオチは好きでした。
本筋と離れたエピソードや事件の方が面白かった。
個人的にはそんな感想になってしまう作品でした。
『乱れからくり』
★★☆☆☆ / (2点)