この作品の表紙はこのamazonで紹介されているイメージを自分も持っていましたが、最近書店で観た物はこの表紙の上にもう一枚カバーイラストが描かれたものが掛かっていました。
それは黒い背景に赤いドクロの絵が描かれたもので、帯の部分には「これを読まずにミステリーを語るなかれ。」と書いてあります。
(ちょっと「かまいたちの夜」を彷彿とさせますね)
この作品はいずれ読もうとは思っていましたが、書店のこの文句を目にした時から「そろそろ読まねば」とは思っていました。
ただ、自分がこの作品を先延ばしにしていたのには理由があります。
この作品、所謂叙述トリックが仕掛けられた作品なんですが、何かの拍子にその仕掛けのネタバレを見てしまったことがありまして。
具体的なネタバレではなかったんですが、どういう類の叙述トリックなのかを知ってしまったために、興が削がれてしまいまして先延ばしにしておりました。
でもまぁ、最近になって表紙がドクロの物になって気になっていたので、このタイミングでの読書となりました。
さて、中身の話です。
読む前から「グロイ」「陰惨」などという評価は知っていました。
「でも大したことないだろう」と高をくくっていましたが、思っていたよりもグロい描写でした。
思わず飛ばして読みたくなるほどでしたが、気を張って何とか読み続けました。
描写もそうなんですが、犯人の心理面もなかなかに陰惨なもので、気持ち悪いほどでした。
先にも述べた通り、自分はこの作品に仕掛けられたトリックのヒントを持っていました。
故に特にその部分に気を付けて読んでいたんですが、読み進めている内に逆に訳が分からなくなってきました。
もしかして・・・という推測は当たってはいたんですが、最後にそれが明かされた時は結局呆然としてしまいまいた。
この作品は巻末に解説にもある通り、この仕掛けられた叙述トリックの一点突破になっているかと思います。
その発想自体はお見事だとは思うんですが、これが叙述トリックの難しいところで、そこに力を注ぎ過ぎている故にどうしても他の部分がチープに感じてしまいます。
色々ネットで解説も読んでみましたが、過去に実際に起きた事件が作品内に落とし込められているのではというものもありました。
なるほど、それは確かに意義のあることなのかも知れません。
ただそれが上手く物語に落とし込めているのか、正直微妙だと思います。
それ以前にこの物語をどう読んだら良いのか、最後まで分からないまま終わってしまった感じがします。
叙述トリックと言えば自分はまだ読んでいない折原一さんや、その他にも現代では沢山その手の作品が出ていると思います。
有名な作品も沢山あります。
でも、やっぱりこの叙述トリックというのは諸刃の剣のような気がしてなりません。
仕掛けが自分に見事ハマれば『アクロイド殺し』のような二度と味わえない興奮を体験できますが、外れた時の肩透かし感は半端ありません。
「一体何を読まされていたんだ?」という徒労感が残るのみです。
『殺戮にいたる病』は自分にとっては後者の作品です。
この作品は、トリックもさながら物語自体に没入することが出来ませんでした。
そういう意味では、自分には完全に合わなかった類の作品です。
飽くまで個人的な感想です、この作品を高く評価されている方も多くいらっしゃいます。
それを否定するつもりはさらさらありません。
ただ、自分には合わなかった。それだけだと思います。
この発想を読んだという意義はあったと思います。
ただそのためだけに読んだ、というのも否定しきれない、そんな作品でした。
『殺戮にいたる病』
★★☆☆☆ / (2点)