職場の人に借りた本シリーズです。
この作品は元々読みたいと思っていたので、話を聞いてすぐに飛びつきました。
短編集なんですが、こういった作りの短編集を自分は初めて読みました。
「F県警強行犯シリーズ」の第1作目ということで、F県の捜査一課の中の一班・二班・三班のそれぞれの班が手柄を争う模様が描かれています。
特徴的なのは各編で一班が主役で三班が小役で出てくる話、三班が主役で一班がサブの話、二班がメインで一班が小役の話・・・等々、各編でのそれぞれの登場人物は全てリンクしているのですが、主役は各編とも違うので視点が入れ替わり・立ち替わり、でも捜査一課の人物相関図は同一というのが自分には新鮮でとても面白かったです。
また、一班・二班・三班ともに班長にそれぞれ優れた特長があり、カラーがきちんと色分けされているのもグッドでした。
作り自体も新鮮で面白かったんですが、お話としても全編がかなり面白かったです。
「ペルソナの微笑」だけはちょっと質が落ちるような気もしますが、あとはどれもが甲乙つけ難いくらい面白かった。
この後のシリーズがどうなっているのかは全く知りませんが、『第三の時効』に関しては特に一般率いる朽木がよく描かれていたように思います。
この朽木の視点で話が進むときは頼りがいのある男という感じなんですが、別の班の視点からすると冷徹な男という見られ方をされているというのも面白い。
次点で三班の村瀬がよく描かれていましたが、シリーズ第一弾の時点で天才ぶりが垣間見えます。
最後まで謎を残し、氷のように冷たいイメージを残した楠見の視点がもう少し見たかった。
これはシリーズ1作目ですから、仕方ないのでしょう。
優秀だけど他の班より上に行こうとする野心、同じ班内でもライバルを蹴落としたいと思っている野心、そんな優秀過ぎる班長でコントロール不能な3人を管理する立場にある班長より劣るような気がする課長と部長。
この辺に怒りを覚えたり、頼りがいを覚えたり、情けなさを覚えたり、拍手を送りたくなったり。
読んでいて色々な感情が芽生えた作品で、全編通して濃厚な6編でした。
ドラマ化もされているとのことで、それも気にはなるのですが、まずは原作の方でシリーズを読破したい。
読了後に強くそう思いました。
本当なら満点を付けても良いくらいの出来だと思っていますが、読了後に「もう終わり!?まだ描き切ってないでしょう・・・」っていう不完全燃焼だったのが悔しかったので、満点は取っておきます。
『第三の時効』
★★★★★ / (5点)