実はこの本を買ったのは年明けすぐくらいだったかと思います。
寒い時期には冬を感じる本を読みたくて、表紙は元々知っていたので買ったんですが、結局読了したのは春になってしまいました。
まぁ内容は「冬」なんて言葉じゃ済まないくらいの極寒の舞台だったので、冬でも春でもそこはあまり感覚も違わなかったのかなと思っています。
この表紙好きなんですよね~。
この作品が『そして誰もいなくなった』のオマージュであることは知っていたので、いつか読もうとはずっと思っていました。
「21世紀の『そして誰もいなくなった』」なんて大げさな煽り文句が目を引きます。
ただ巻末の解説を読むと作者は『そして誰もいなくなった』よりも『十角館の殺人』を意識していたようです。
読んでみて、その話はすごく納得できました。
『そして誰もいなくなった』のオマージュといえば数多くあると思います。
自分が読もうと思っていてまだ未読のものもありますが、少なくともトリックで圧倒されたことは正直ありません。
そもそも大元の『そして誰もいなくなった』自体が自分はあまり好きではありません。
今作も悲しいかな、トリックの部分に関しては『十角館の殺人』同様になんとなく予想出来てしまい、トリック自体を楽しむことは出来ませんでした。
意味深に飛行船内の地図が載っていたりしましたが、そういうパズル的なトリックは本作では一切使用されていません。
ただストーリーとしては楽しめました。
次々に殺されていく被害者たちと時折出てくるレベッカという名前。
過去に一体何が・・・。
というのが途中から徐々に形になっていく訳ですが、まぁ被害者が全員クズ過ぎて、犯人やトリックよりも動機の追い方が面白かったです。
ちなみに読了後にこの本のレビューを色々と読んでみたんですが、「ライトノベルっぽいノリで苦手」という感想が多く見られました。
確かにこの本の探偵役の二人であるマリアと漣のやり取りはノリが軽くてライトノベルっぽい感じはします。
でも自分はこの本に詰められれている科学的な話がとても好きです。
実際には存在しない小型飛行船が普及する世界というフィクション上の話ではありますが、夢があります。
この軽さと科学の組み合わせが新しい理系ミステリーという感じがして、トリックはイマイチでも雰囲気と世界観はとても好きでした。
「推理」小説としては微妙でも推理「小説」としては好きです。
理系ミステリーとしてはとても読みやすく、話も好きな作品でした。
「21世紀の『そして誰もいなくなった』」なんて煽り文句のせいで無茶な期待感を持ってしまいますが、先入観なしに一つの推理小説として読んだ方が良い。
そんな事を思った作品です。
ちなみにこの作品「マリア&漣シリーズ」としてシリーズ化されているようです。
読み易さからして、次もすぐに読む予感があります。
『ジェリーフィッシュは凍らない』
★★★☆☆ / (3点)