タイトルだけ見て面白そうだな～とずっと気になっていた本です。
後半の「王手飛車取り」というのが将棋のような緻密なトリックを連想させたからです。
しかしながら、内容に緻密さを感じることは出来ませんでした。
チャット仲間で互いに推理クイズを作成して出題する、という現実世界でもありそうな内容を更にフィクションならではの昇華をさせたのが本作です。
推理ゲームを作成するだけで終わらず、実際に出題者は殺人を行いそれを元に何かしらの出題をローテーションで出していく、というのがおおまかなあらすじです。
出題は例えば「死体の運搬方法を当ててみせよ」ですとか、「このアリバイトリックを打ち砕いてみせよ」といった出題が実際に出されています。
フィクションだと割り切って読んではいるものの、第一章から連続殺人が出題のテーマとなっており、次々に人が殺されていきます。
まずそれに違和感がありました。
言ってしまえばただの推理オタクの集団が次々と殺人を成功させていく訳ですが、あっさり進み過ぎて「これでいいのか？」と違和感が最後まで拭いきれませんでした。
倫理観とかそういうことではなく、緻密なトリックを組み立てる必要が無いというのが何ともバカバカしく思えてしまったからです。
唯一最後と最後から２番目の事件に関してはなかなか良いトリックだとは思いましたが、緻密とは言い難いと個人的には思っています。
また、本作にはちょっとした仕掛けが幾つかあり、最後の方でそれが明かされる訳なんですが・・・。
正直自分的にはどれも不発でした。
読みながら「これってこういう事なんだろうな」「これってこういう展開なんだろうな」と思っていたことが殆ど当たってしまいました。
「王手飛車取り」なんて仰々しいタイトルは一体何だったのか・・・。
正直、内容がタイトルに負けている気がします。
それともこのタイトルは続編への伏線なのか・・・。
ただこの本、すごく読みやすかったです。
スラスラ読めました。
また殆どが東京が舞台になっているのですが、自分の土地勘のある場所ばかりで想像しやすく面白かったです。
これは読み終わってから知った事なんですが、この作品実は完結しません。
続きが気になるところ終わってしまいます。
続編の「２．０」があることは知っていたのですが、こんな形で続く続編とは思っていませんでした。
ある意味それが一番の驚きでした。
巻末の解説によれば３部作で二つの大きなテーマがあるとのことです。
それが何なのかは気になるところではありますが、すぐに続編を読もうという気にもなれないのが正直なところです。
勝手にタイトル詐欺にあったような・・・被害者面した印象だと分かってはいますが、そういう思いが自分の中から拭いきれず、仕掛けも不発だったことからどうも好きになれない一冊でした。
『密室殺人ゲーム王手飛車取り』
★（★）☆☆☆ / （１．５点）
