何だかんだで今年まだ2冊目のクリスティです。
クリスティの本は非常に読み易いので、もす少しハイペースで読みたいとは思っているのですが・・・。
読む前は知らなかったんですが、本作にはポアロシリーズでお馴染みのオリヴァ夫人が登場します。
登場シーンは短いんですが、非常に重要な役回りを担っています。
役割こそ全然違いますが、ヘイスティングズ並みの手助けをしてくれます。
それはさておき、本作は『殺人は容易だ』に近いものがあるかと思います。
それは主人公のマーク(作中では姓の方で呼ばれることが多いですが)の周りで起きた幾つかの不幸な死が、実は意図的なものなのでは?と疑い始めるところからスタートするからです。
『殺人は容易だ』では割と序盤から疑いを持ち始めていたと思いますが、本作では中盤頃からマークが本格的な疑いを持つようになってきます。
実は、自分はその中盤まではかなり面白いと思っていました。
それは、事件が起こるのは殆ど序盤に集約されていて、その事件に疑いを持つまでの過程がなかなか濃密だったからです。
マークの知っている名の人物が亡くなり、そこに今度はマークの全く知らない人物が亡くなります。
その関係ないと思われていた人物が隠し持っていたメモには何人かの名前が書かれており、その内の殆どの名前にマークは心当たりがありました。
まずここが疑いの第一段階です。
ここまでで既に面白かったです。
その後、友人ご一行と一緒に居た際に、連れのガールフレンドが偶然「蒼ざめた馬」のとある噂を口にします。
そこから物語の展開が急に変わってきます。
今度は「魔女」と呼ばれている一家が登場します。
この奇妙な魔女たちと接したマークは、一連の奇妙な死は実はこの魔女が魔術で呪い殺したのでは?と疑い始めます。
これが疑いの第二段階です。
ここまでは面白かったんですが・・・。
ここからの展開が自分にはダルく感じてしまいました。
新たな協力者を見つけるまでの過程、疑わしい人物を調査する過程、実際に調査に踏み込む過程・・・。
後半はこういった事が続くんですが、地道な作業です。
この地道な作業に終止符を打ってくれるのが、他ならぬオリヴァ夫人です。
オリヴァ夫人の再登場からの展開は流石に面白かったです。
序盤のシーンで気になった描写があったんですが、それも見事に回収してくれてすっきりしました。
正直、犯人は割と分かり易い気がします。
それでも実は序盤から疑われていた犯人とその理由、犯行の手口、等々が一気に暴かれていく展開はなかなか面白かったです。
ただ、犯人のキャラからしてちょっと計画が壮大過ぎやしないかと思わなくもないです。
どうしてそう繋がったのかもよく分かりませんし、自分が一番分からないのは犯行の手口をどうやって操ったのかということです。
ここがイマイチ理解出来ませんでした。。
これは自分の理解力不足だからかも知れません。
ラブロマンスも混ざっていますが、クリスティに読み慣れていない人でも「やっぱりそういう展開になるよね~」という予定調和で、そこに関しては何も思いませんでした。
全体的にはクリスティらしさを感じるものの、もう一つかなという印象です。
つまらなくはないです。
時代的な科学やそれによる人間の仕事量の話など、この時代からそういう話ってあったんだな~という感心はありました。
そういう意味では、あらゆる点で恐ろしさを味わえる一冊かも知れません。
最後に、ルジューン警部の台詞で気に入ったものを紹介します。
「悪は人間を超えるものではなく、人間以下のものなんだ。」
『蒼ざめた馬』
★★★☆☆ / (3点)