タイトルからして注目してしまった一冊でした。
文庫版の発売日に購入してはいたのですが、このタイミングでの読書となりました。
題材からしても、「本当に大丈夫なの?」という不安が購入前からあったのですが、帯に書いてある有栖川有栖の太鼓判を押すかのようなコメントに背を押されました。
この一冊はちょっと書きたい事が色々とあり過ぎまして。
それは物語的な中身のことよりも、本作で出てくる音楽・・・特にロックについてのことです。
下手すると終始そのことについて書いて終わってしまいそうなので、今回は「ミステリー編」と「音楽編」に分けて記事にしたいと思います。
まずは「ミステリー編」。
事件はライブハウスで人気バンドのメンバーが、アンコールのステージが照明落ちている間に殺されていた・・・という幕開けです。
このライブ中に殺人事件が起こる・・・というのは、自分はゲームの「逆転裁判4」に出てくる話を思い浮かべました。
もっとも、あっちはアリーナ、こっちはキャパが500人程度のライブハウスですが。
これはあとがきの有栖川有栖が言っていて気付いたことですが、エラリー・クイーンの処女作である『ローマ帽子の秘密』もこんな題材でしたね。
なので過去にもこういう題材の話はあるのかも知れませんが、ロックバンド×ミステリーという構図は新鮮なのでは?
少なくとも自分的には新鮮でした。
このステージ上での事件の他にも事件は起こるのですが、そっちは割と普通の密室事件です。
こっちの事件のおかげで、自分は犯人が分かってしまいました。
正直に言いますが、ミステリーとしては自分はかなりイマイチな作品だと思っています。
この作品嫌いじゃないです。
むしろ好きです。
でも、ミステリーという部分に焦点を当ててしまうと・・・ちょっと微妙。
突然登場する探偵役、無理矢理音楽と関連づけて進む推理、理解出来そうで全く理解出来ない動機、思わせぶりでその実何でもない行動、被害者側も「何でそんな行動取ったの?」と疑問を持たざるを得ない・・・etc。
各キャラは立っていると思っていただけに、ちょっと残念。
なので、自分はミステリー小説というよりもロックに重きを置いた小説として楽しんでいました。
有栖川有栖は「がっつりロック×本格」と述べていますが、うーんどうなんだろう。
本格と言われれば本格のなのかも知れません。
でも、それが面白いかと言われると「別に」っていう感じです。
ところで作中である人物が「ロック」と「ミステリー」は似ているという話をしています。
簡潔に書くと、
「ロック」も「ミステリー」も定義づけが出来ない。
音楽的なアイディアもミステリー的なトリックも既に出尽くしてしまっている。
でも、それでも新しい物を模索し続ける、それも「ロック」あるいは「ミステリー」の範囲内で。
この話はなるほどね、と思いました。
そう考えると、ロックもミステリーも不滅のものと言えるのでしょう。
という訳で、ミステリー編としては個人的に残念な評価になってしまいました。
でも面白かったですよ?
いや、本当に。
ただミステリーとしてはイマイチだったというだけで。
物語自体とキャラは良かったです。
次は「音楽編」です。
こっちのがメインかも知れない。