この作者の作品で『そしてミランダを殺す』という作品を以前読んでおりまして、その作品が個人的に大好きだったんですよね。
で、この作品は『そしてミランダ~』よりも前の作品で処女作にあたるということです。
てっきり『そしてミランダ~』が処女作だと思い込んでました。
実はこの作品、衝動買いです。
この表紙と『そしてミランダを~』が好きだったこともあり、我慢出来ずに手にとっていました。
本作とは関係ないんですが、『そしてミランダを殺す』について少し…。
『そしてミランダを~』を読んだのは巷を賑わせていた『カササギ殺人事件』が数々の賞を受賞した時でした。
『カササギ殺人事件』は「クリスティへのオマージュが散りばめられている」との文句に「これは読まねば!」と期待して読んだのですが、正直個人的にはイマイチだったんですよね。
それで、その年のこのミスで2位だった『そしてミランダを殺す』の方が面白そうだと思って口直しのつもりで読んだら、個人的にはこっちのが全然面白かった。
今でも大好きで印象的な作品です。
ただ、この作者の作品はそれ以降も出ているのは知ってましたが、読んでません。
なんかたまたま見たレビューが極端な評価だったので、興味が失せてしまったんですよね。
という訳で前置きが長くなりましたが『時計仕掛けの恋人』です。
結論を先に言えば、この作品買って良かったと思っています。
『そしてミランダを殺す』と似ているんですが、本作をマッシュアップしたのが『そしてミランダを殺す』なのかなという印象です。
過去の自分(達)の回想と現在の先が未知の自分が交わっていくあたりの展開は『そしてミランダを殺す』と全く同じですね。
男女の関係の縺れから事件が発展していく、女性側が魅力があって頭が良くてハラハラする、というのも同じですね。
同じなんですけど、楽しめちゃう。
結局この作者の作り出す物語と情景が好きなんだと思います。
よく考えてみると、主人公の男もダメな奴かも知れません。
昔関係のあった女性に騙されると分かっていて騙されてしまう・・・。
こいつが歯止めを掛けていれば防げた事件もあった気がしますが、結局は掌の上で踊らされていただけなのか。
そう、この作品の終わり方は読者の想像に委ねられているので、感じ方が様々になるかと思います。
ただ作者の誘導で疑心暗鬼を植え付けられているので、見えるエンディングは限られている、と言えるのかも知れません。
『そしてミランダを~』の終わり方は個人的にはかなり秀逸だと思っていますが、今作もこの良い意味で未知なるモヤモヤが残る感覚が、まさしくミステリーという感じがしています。
単純に物語としても面白かったです。
『そしてミランダを~』よりは落ちると思いますが、同じように好きな作品でした。
なんかもう一度『そしてミランダを殺す』が読みたくなる、そんなワクワクを注入された気がします。
繰り返しになりますが、多分この作者の世界観が自分は好きなんだと思います。
やっぱり他の作品も読むべきか。
うん、面白かったです!
『時計仕掛けの恋人』
★★★★☆ / (4点)