年に1回くらいのペースで読み返しているオリエント急行です。
自分は今までハヤカワ文庫から出版されているクリスティ作品しか読んだことがありませんでした。
今回は折角なので角川文庫版で読んでみようと思い、初めてハヤカワ文庫以外で読みました。
ハヤカワ文庫版では『オリエント急行の殺人』という日本語タイトルで、自分としてはこちらのが馴染みがあります。
原題は『Murder on the Orient Express』ですので、『ナイルに死す』とは異なりどちらでも良いですかね。
という訳で今回はタイトルに敢えて(再読)とは入れていません。
自分が初めて読んだクリスティの作品がこの『オリエント急行の殺人』(ハヤカワ文庫)でした。
中学生の頃は赤川次郎の作品やシャーロック・ホームズシリーズなど読んでいましたが、高校生の頃は読んでいたのは殆どがライトノベルで推理小説は全くと言って良いほど読んだ記憶がありません。
大学に上がってから通学時間や当時付き合っていた彼女の家に通う時間を有意義に過ごすのに推理小説を読むことに決めて、最初に手に取ったのがこの作品でした。
「タイトルは知っているけど内容は全然知らないぞ。よし、これにしよう!」くらいの気持ちでした。
今思えば大正解です。
初めて読んだ時の感想は忘れらません。
この作品から感じることのできる旅情感、登場人物の喜怒哀楽、そして何より独特な結末。
「推理小説でこんな展開ってアリなんだ!!」と興奮したのを今でも覚えています。
(だからこそ、『死との約束』で本作に言及されてる場面はガッカリしました。)
あのワクワク感が忘れられず、再び書店に赴いてタイトルだけで次に読むことを決めたのが『ABC殺人事件』でした。
ABCを読了後に、それがクリスティの代表作だということを知りました。
そこで、どうせなら先に代表作として名前の挙がっている『アクロイド殺し』を読んでしまえ!と考え『アクロイド殺し』を読んだことが、今でも推理小説が好きで読んでいる原動力のようなものになっている気がしています。
そう考えると、自分にとって『オリエント急行の殺人』という一冊はとてつもなく重要な作品であります。
ただし、自分にとって想い出や思い入れがあるというだけでなく、そもそも大のお気に入りの一冊だから毎年のように読み返しているのです。
何が言いたいかって、この作品が大好きだってことです。
今回は翻訳も異なり、読んでいる際の頭に浮かぶ風景もいつもとは違いましたが、「やっぱりこれだな」と思える感動がこの作品には詰まっています。
ハヤカワ文庫版の方が洗練されている印象はありましたが。
自分が初めて読んだクリスティの作品はこれでしたが、他人に薦めるとしたらこの作品は選ばない気がします。
だってこの作品は特別であり、特殊だから。
結末もさることながら、警察が介入出来ないため乗客の身分や証言の真実味はポアロ達自らが決断して取捨選択しなければならないからです。
このある意味心理戦こそクリスティの真骨頂だとは思いますが、やっぱり普通の推理小説で起きる情報の集め方とは少し異なりますからね。
登場人物も多いです。
故に魅力的でもあります。
冒頭でポアロと旧知の仲であるブークが語る、
「なんとも物語的だと思わないかね。あらゆる階級、あらゆる国籍、あらゆる世代の人びとが勢揃いだ。三日間もにわたり、そんな赤の他人同士が一緒に過ごすのだからね。
という台詞がまさに本作の魅力を語っているように思えます。
人物は多いですが、ややこしさは抑え目ではあるので、自分みたいな超初心者でも楽しく読めました。
舞台、物語、人、そして魅力的な探偵とこの作品にはクリスティ作品らしい魅力が詰まっています。
こんな作品を何の予備知識もなく真っ新な状態で読めた自分は超絶ラッキーだったと思います。
映像化もされている本作ですが、映画版に関しては新旧両方観ています。
旧の方はリバイバル上映を映画館で、新の方は公開当時に。
ただし、自分はどちらも好きではありませんでしたが・・・。
三谷幸喜監督のものに関してはオリエント急行に限らずですが、映画以上に好きになれませんでした。
海外ドラマの「名探偵ポアロシリーズ」は全く観たことないのですが、こちらは評判が物凄く良いのでいつか観てみようと思っています。
ということで、読了したばかりですがまた次も読むのが楽しみです。
次は光文社から出ている版で読むのも良いなぁ。
角川版は目次が簡素過ぎて、本作みたいに後から戻って読み返そうとするのに不便でした。
ハヤカワ文庫版ですぐ読み返そうかな~。
自分の原点とも言える本作。
やっぱり最高でした。