朝井リョウの作品を読むのはこれで3冊目ですが、自分には数少ない「この作家の作品が好き!」と言える作家の一人が朝井リョウです。
この作品は『桐島~』に続き2作目ということですが、桐島とは正反対のド直球の大学生を主人公とした青春小説です。
柔道一家に生まれた主人公が、柔道では輝けない事を悟った主人公の晴希が同じく柔道をやっていた親友の一馬に誘われて男子だけのチアリーディングを始める物語です。
前半は仲間が7人集まり初舞台を経験し、後半では更に仲間が増えて16人と大所帯になります。
16人全員という訳では無いのですが、それぞれの胸の内には秘めた思いや過去があり、それが最後の演技に繋がっていく展開はかなり胸熱です。
先ほど「仲間」という言葉を使いましたが、全員が全員仲良しという訳では無く、また演技を通じて仲違いしていた関係が良好になるという展開もありません。
分かり易く言えば、スラムダンクにおける流川と桜木のハイタッチのシーンみたいなものはありません。
それが逆に自分にはリアリティがあって良かったです。
仲違いしている者も居ますが、基本的には仲間意識が強い人間関係が描かれていて、何度もお互いに衝突しながら本気でチアリーディングに取り組んでいく姿は素直に感動しました。
ただチアリーディングに関する知識は全く無かったので、演技シーンは上手く思い描けないまま進んでしまいました。
後で本作の着想元である早稲田大学の男子チアリーディングチームであるSHOCKERSの映像を観ましたが、凄まじかったです。
人間技だとは思えなかった。
本作は実写映画化やアニメ化もされているようですので、観てみたいな。
笑えるシーンも沢山ありましたし、泣けるシーンも沢山ありました。
実際素人が生半可でない努力をしたとして、これほど上手くいくのかは分かりません。
でも理屈抜きに物語に没頭できて、彼らの吐く言葉に感情が揺さぶられ、それぞれの胸の内が明かされた後のラストの演技シーンには心の中で叫びたくなるほどでした。
桐島にはもっとリアルな感動がありましたけど、本作にはフィクションでも感動させられるだけの力強さがあると思います。
とても面白い作品でした。
『チア男子!!』
★★★★★ / (5点)