アガサ次郎の推理日記

推理小説好き(初心者)です。主に読んだ本の感想を書き込んでいきます。

『水晶のピラミッド』 / 島田荘司

 

前作『暗闇坂の人喰いの木』を読んでから大分間が空いてしまった御手洗潔シリーズです。

ボリューム的には前作と同じくらいか、それ以上でしょうか。

 

ただ本作の3分の1はプロローグみたいなもので、他3分の1で事件が起こり、御手洗は残りの3分の1にしか登場しません。

そのプロローグ的な部分では古代エジプトのロマンスや処女航海で沈没したタイタニック号の話などが交互に続きます。

このプロローグ部分の効果で、本作もオカルト的なミステリーを彷彿させてくれます。

古代エジプトで無念の内に死んだ男が現代に蘇ったのか!?

とか、

冒頭に書かれた現代の海辺及びタイタニック号に出現した謎の生物は一体!?

とか。

ただ作中の人物と異なって、我々読者はそんなオカルト的要素はある訳ないと思って読み進めていくことになるでしょうが。

ちなみにタイタニック号の会話の中で占星術の話が出てきて、ちょっとテンション上がりました。

 

そこから現代に話が移りますが(遊戯王みたい)、アメリカ・ルイジアナ州にあるビッチ・ポイントという岬の先にあるエジプト島という島が事件の舞台となります。

そのエジプト島にはエジプト・ギザの大ピラミッドを原寸大で再現したピラミッドが建っており、そのピラミッドに隣接して建っている塔の最上階で密室殺人事件が起こります。

ちなみに色々あって、この事件現場には前作に登場した松崎レオナが居り、それがきっかけとなり御手洗を事件へと導くことになります。

密室ということも不可解ですが、死因がそれ以上に不可解。

検死の結果、またまた不可解な事実が他にも。

謎が謎を呼び、更に謎が積み重なる正にミステリー。

 

なんですが・・・色々とレビューも読みましたが、やはり賛否両論ありますね。

どちらかと言えば否定的な感想が多かった印象です。

プロローグ的な部分が長すぎる・要らないというものが殆どだったような。

自分はこの部分はこの部分で結構楽しめました。

やっぱりピラミッドで言い難いロマンがありますよね。

自分は知識は全くないですが、だからこそ石岡やレオナや学者が語るピラミッドに纏わる話は結構面白かったです。

 

ただこの否定的な意見が多い部分は、正直本筋とはあまり関係がありません。

不可解な密室殺人事件のみに焦点を当ててレビューを読むと、自分も納得する否定的意見がありました。

それは犯人がどうやって密室を脱出したか、という点です。

これはルール違反でしょ、という意見がありまして、確かにそうかもと思いました。

最初読んだ時は何も思いませんでしたが、後になって振り返ると確かにそりゃないでしょという意見も分かるな~と。

これをやられると、今後このパターンも疑わざるを得なくなるかも。

まぁ本作の場合はちょっとしたヒントはある訳ですが。

それともう一つ。

御手洗は解決編を2回行いますが、1回目の時に検死のとあるデータを全員が無視していたのがどうしても気になります。

結局2回目の解決でそれは回収される(でもちょっと強引)のですが、やはり1回目の解決はアメリカ警察が杜撰過ぎるんじゃないかと思わなくもないです。

(ただ自分も小学生以下でしたが・・・)

 

それと、これは自分の頭の弱さのせいなんですが、ピラミッド内部や周辺の構造がどうも頭の中で上手く描けませんでした。

このスケールを実写化するのは難しいかも知れないので、誰かアニメ化とかしてくれないかな。

観てみたい。

 

ということで、本作もスケールの大きい大作ではありました。

しかしながら前作同様、謎解き部分に関してはちょっとのめり込めない解決で、いささか残念でした。

ただ全く楽しめなかった訳でもなく、読むのに苦労した訳でもありません。

(ピラミッドの構造を想像するのは途中で投げ出しました)

御手洗の演説は面白いものばかりでしたし、最後の人間らしさを見せる所も好きでした。

でもやっぱり本格推理小説としての面白さを期待してしまうので、そういう意味では期待ハズレでしたね。

 

御手洗シリーズはここからは本作程のボリュームになっていくのでしょうか。

だとしてもこのシリーズは読み進めて行きたいですね。

このシリーズには魅力があります。

次も楽しみです。

 

 

 

『水晶のピラミッド』

★★★☆☆  /  (3点)