年内最後の金田一耕助シリーズ作品です。
よくよく振り返ってみると、今年は『迷路の花嫁』と『三つ首塔』しか読んでませんでした。
早速ですが『吸血蛾』です。
先に正直な感想を書いてしまうと、個人的にはイマイチな作品でした。
金田一耕助シリーズと言えば、本格推理ものから怪奇もの、あるいはその合わせ技いった作品が多いですが、本作は怪奇もの寄りだと思います。
それはそれで面白ければ構わないのですが、本作は読んでいてちょっと飽きが生じてしまった印象です。
マンネリ化している感もあるな~と思っていたら、よくよく考えてみると本作は『幽霊男』にちょっと似てる気がする。
そして『幽霊男』と比較すると、怪奇さも物語の面白さも劣る気がします。
ちょっとネタバレ気味の感想になってしまいますが、本作では過去一番と思えるくらいの犠牲者が出ますが、その殆どが無意味な殺しだったことが最後に分かります。
それはクリスティの某作品のようなミスリード的なそれとは異なり、ただ犯人が異常だっただけ、という結論を金田一耕助は語っています。
それが自分的にはどうも納得できず、この辺りの動機づけというものを自分は特に重要視している気がするということを、改めて強く感じました。
例えば綾辻行人の『十角館の殺人』などの超有名作でも、動機部分がしっくり来ず、物語としては面白かったのに、その部分だけで個人的評価が一気に下がってしまったり。
本作もそれに近いものがありますね。
それと、怪奇的・猟奇的な作風にマンネリ化を感じてしまったことも否めません。
金田一耕助シリーズは発表順に読んでいますが、10作以上も読んでいるとそれは致し方ない気はします。
それ以前に、物語として引き込まれる感じが本作には全くなかった事が、マンネリ化を感じる要因だった気がします。
これまでの金田一耕助シリーズでは作品ごとに様々な読後感を持っていましたが、本作を読んだ後に自分の中に残ったものは何一つないです。
きっと自分の中で過ぎ去ってしまう作品の一つになることでしょう。
ということで、被害者の数なら過去最大級になると思いますが、どの角度から見ても評価することが難しい作品でした。
唯一少しだけテンションが上がったのは、日比谷公園にある松本桜(本作では「M桜」という表記)の描写が出てきた場面だけです。
ちなみにこれを言ってはオシマイかも知れませんが、警察の無能さも本作では際立っている場面があります。
あと、金田一耕助の活躍も最後に数ページあるだけで、殆どが「ただ居るだけ」になっているのも残念なポイントです。
ページ数で言えば短いんですが、面白さが無い分長く感じてしまいました。
来年も引き続き金田一耕助シリーズは読んでいくつもりです。
『悪魔の手毬唄』までは何とか頑張りたい。
ちょっとこの辺りで映像作品でも観てみようかしら。
金田一耕助って色々な役者が演じてらっしゃって、どれを見たらいいのかよく分からないんですよね~。
ちなみに本作も2回ほど映像化されているようです。
『吸血蛾』
★☆☆☆☆ / (1点)